ケーススタディ

萩原工業株式会社

IoT化に向けた統合情報システム基盤構築事例
ftServerでパフォーマンス向上と運用保守工数の削減を実現

合成樹脂加工製品事業と産業機械事業の2つを柱に国内外でビジネスを展開する萩原工業は、業務効率の向上を目指し、ICT化を推進。今回、各種業務システムが稼動しているハードウェアの老朽化に伴いリプレースを実施。乱立するサーバを仮想化統合し、新情報システム基盤を構築。

課題

岡山県倉敷市に本社を置く萩原工業株式会社は、合成樹脂繊維「フラットヤーン」を用いた関連製品、および同技術を応用した産業機械の製造・販売を行っている。

「フラットヤーン」とは、ポリエチレン・ポリプロピレンのフィルムを短冊状にカット(スリット)し、延伸することにより強度を持たせた平らな糸だ。

そのフラットヤーンを用いた製品は、行楽シーズンに活躍するレジャーシートやラミネート加工を施されたブルーシート、人工芝の繊維、建築中の建物を覆うシート、土砂災害を防ぐための土嚢など、人々の身近な暮らしから産業活動まで、幅広い用途で利用されている。

同社では業務効率の向上を目指し、早くからICTを推進してきた。業務システムなども開発し、部門を超えて各種業務に活用されている。

「基幹システムで蓄積しているデータから現場で必要なデータを抽出・表示する『HAGI-Webシステム』は、当社の業務に欠かせないシステムとなっています」と、事業支援部門 経理部 情報システム課 伊東研吾 氏は語る。

この「HAGI-Webシステム」はブラウザで閲覧できる社内情報共有システムで、仕入れ、受注、在庫、生産管理、販売実績、稼動率、利益率といった各現場が必要とする情報を見える化するためのBI(Business Intelligence)の仕組みだ。このシステムにより現場担当者は、業務に必要な情報を簡単に入手できる。ビジネススピードと業務効率の向上に大きく貢献しているシステムだ。

「基幹システムで蓄積している情報は資産そのものです。しかし、当社の基幹システムでは情報を直接参照できません。そこで、定期的に基幹システムからデータを取り出して保存するデータベースを構築し、HAGI-Webシステムから参照しています」と、伊東氏は続ける。

しかし、構築から7年が経過したHAGI-Webシステムは、ハードウェアの老朽化が問題となっていた。

「まず、バックアップ装置が故障したのですが、保守部品が入手できず修理することができません。日に日にリスクが高まっている状態でした。また、サーバのパフォーマンスが足りず、データを表示するまでに数十秒待たなければならないのが当たり前で、タイムアウトするケースも頻発していました。その結果、業務効率が低下していました」と、合成樹脂事業部 活性部 活性課 物づくり活性チーム 係長 瀬良保氏は振り返る。

HAGI-Webシステムのサーバリプレースは急務だった。「しかも、他システムについても老朽化対策や、HAGI-Webシステムと連携する他の業務システムからのデータの増大などで、全体のリソース不足に陥るのは目に見えていました。そこで、将来を見越した統合情報システム基盤を導入する必要があると考えました」と、伊東氏は語る。

早速同社では検討が行われ、新情報システムには仮想化基盤を採用し、既存システムを順次移行することとした。

「移行に際して重視した点は3点です。まずは信頼性。当社の工場は24時間365日稼動しています。複数の業務システム を仮想化統合する基盤となるハードウェアには、これまで以上の信頼性が求められます。2点目はデータベースの移行支援。当社のHAGI-Webシステムは自社開発しています。構築当時の仕様書や運用マニュアルが不十分で、ナレッジが継承されていなかったため、移行には大きな不安を抱えていました。3点目は導入費用。関連する費用が予算内に全て収まること。この3点を満たす提案を複数社に依頼したところ、富士ゼロックス岡山さんからとても目を引く提案があったのです」と、伊東氏は振り返る。

ソリューション - IoTへの大きな一歩

多くの提案は、クラスタシステムを用いたものだった。複数台のサーバと外部ディスクを組み合わせることで冗長性を確保する狙いだ。しかしクラスタシステムは、障害発生時に本番系サーバから待機系にフェールオーバー(切り替え)が発生するため、システムのダウンタイムが生じ、その間の業務停止を避けることができない。また、マシンを切り替えるためメモリやキャッシュのデータ損失も発生してしまう。アプリケーションの書き換えやスクリプトの作成など、導入・運用に工数がかかるという課題もある。

一方、富士ゼロックス岡山の提案は、ストラタステクノロジーの無停止型サーバ「ftServer」を用いた高信頼性システムだった。

ftServerは、CPUやメモリ、電源などすべてのコンポーネントが二重化されており、単一障害点が排除されている。各CPUが同じタイミングで処理を実行し常に同期をとっているため、万が一、障害が発生すると自動的に検出され、即座に障害箇所がシステムから切り離され、OSやアプリケーションに影響を与えることなくシステムは稼動し続ける。障害が発生したコンポーネントはシステムを止めることなく交換が可能で、タイムラグやデータのロストを回避する。

「クラスタシステムと比べ、ftServerは構成がとてもシンプルです。障害発生時でもシステムは止まることなく業務を継続できますが、運用はシングルサーバと変わらないため、システム運用管理者様の工数を削減することができます。可用性が高く、運用保守の手間がかからないftServerは、萩原工業様の新しい情報システム基盤に最適なサーバだと考えました」と、富士ゼロックス岡山 ソリューション営業部 SEグループ グループ長の角南和宏 氏は語る。

「ftServerの稼動率の高さ、障害時の対応、今後の運用管理、保守体制、全ての面で安心できる提案でした。コンパクトな提案で、データベースの移行作業支援も含めて予算内に収まる。これしかない、と確信しました」
瀬良 保
合成樹脂事業部 活性部 活性課 物づくり活性チーム 係長

結果

「これまでと比べてとてもシンプルで使い易い印象です。ftServerに移行後のHAGI-Webシステムのパフォーマンスも大幅に改善されました。ボタンをクリックしてから画面が表示されるまでの時間が1秒程度に短縮され、これまでのようにタイムアウトになる、という状況も起こらなくなりました」と、瀬良氏は導入効果を語る。

「必要な情報がスムーズに表示されるようになり、ユーザから大変好評です。運用管理という視点からも、障害があっても停止しない安心感は大きいです。サーバの管理から解放され、本来の業務に集中できるようになりました。何より、無事にHAGI-Webシステムで使っているデータベースの移行ができてほっとしています。我々だけでは詰め切れなかった細かい部分の調整まで支援して下さった富士ゼロックス岡山さんには大変感謝しています」と、伊東氏も続ける。

萩原工業では構築した情報システム基盤に他のサーバも仮想化統合し、ICTインフラ全体の運用効率化を進める計画だ。さらに、新情報システムをベースとしたIoTやビッグデータへの取り組みについても検討が始まっている。「まずは生産設備の運用効率向上を目指し、センサーデータの収集と分析から取り組んでいます。」

「将来的には、製造工程全体でIoTを活用することも視野に入れています。IoTから得られる大量の情報を利活用することで、生産性の向上や業務効率の改善だけでなく、製造工程の無人化や新しいサービスモデル構築も可能だと考えています。」

「そのためには、機械が安定して動いていること、生産を支える情報システム基盤も安定稼動していることが必須条件です。経営層からはタイムリーなデータ分析など、リアルタイムな情報連携が求められますから、データベースが止まると当社のビジネスが止まってしまいます。今回のftServer導入は、当社のIoTへの取り組みの大事な一歩となりました」と、瀬良氏は今後の豊富を語る。

*2017年6月制作

関連情報